田川 義之(東京農工大学大学院 工学研究院 先端機械システム部門)
流動場中の粒子・気泡クラスターのラグランジュ的解析
(a) Y. Tagawa, J. Martinez-Mercado, V.N. Prakash, E. Calzavarini, C. Sun and D. Lohse: “Three-dimensional Lagrangian Voronoi analysis for clustering of particles and bubbles in turbulence”, J. Fluid Mech., Vol. 693, 201-215 (2012).
(b) Y. Tagawa, I. Roghair, V.N. Prakash, M. van Sint Annaland, H. Kuipers, C. Sun and D. Lohse : “The clustering morphology of freely rising deformable bubbles”, J. Fluid Mech., Vol. 721, R2-1-13 (2013).
固体粒子や液滴,気泡などが含まれる分散性二相流において,分散相はほとんどの場合,連続相の運動に完全には追随せず,密度や大きさまたは形状に応じて多様な運動形態をとる.また,自然界や工業装置においては,分散相は一様ではなく大規模な濃度分布を示すことが少なくない.分散相が高濃度に存在する領域はクラスターと呼ばれるが,このクラスターはシステムとしての二相流および個別分散要素の周りの流れに対して中間スケールに位置する.クラスターの形成は分散相の性状の影響を受け,クラスターの挙動は二相流動に支配的となるため,スケール間には強い相互作用がある.したがって,クラスターの形態と運動の把握は,分散性二相流の理解や予測において極めて重要である.これらの課題に対して,田川氏は三次元ヴォロノイ線図を利用した解析に立脚し,ラグランジュ的視点からクラスターのスケールを定量化する手法を開発した.そこでは,まず,一様乱流中の粒子や気泡のクラスターとこれらを形成する乱流の時間スケールの関係を明らかにし,手法の有用性を示した.つぎに,気泡プルームの中の気泡群に対するラグランジュ的評価により,分散相の配列を決める指標を求め,クラスター構造に対しては気泡形状が重要な因子であることを明らかにした.このようにして得られた成果は2編の代表論文にまとめられており,選考委員会においても分散性二相流の解明・予測・制御に対する顕著な業績であると評価された.同氏は,前述の力学モデルの発展を担う優れた若手研究者であり,今後の流体力学の研究に大きな貢献が期待される.