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受賞者および選考理由(2024年度) 

掲載日:2025年8月11日

受賞者

河田 卓也(芝浦工業大学工学部)

対象業績

壁乱流における非線形スケール相互作用によるエネルギー輸送に関する研究

関連論文

(a) Takuya Kawata, P. Henrik Alfredsson, Inverse interscale transport of the Reynolds shear stress in plane Couette turbulence, Physical Review Letters, Vol. 120, 244501 (2018).

(b) Takuya Kawata, P. Henrik Alfredsson, Scale interactions in turbulent rotating planar Couette flow: insight through the Reynolds stress transport, Journal of Fluid Mechanics, Vol. 879, pp. 255-295 (2019).

(c) Takuya Kawata, Takahiro Tsukahara, Scale interactions in turbulent plane Couette flows in minimal domains, Journal of Fluid Mechanics, Vol. 911, A55 (2021).

選考理由

乱流中に埋め込まれた異なるスケール構造間のエネルギー輸送は,壁乱流における自己維持機構と関連して注目度の高い問題であった.この問題に対し受賞者は,効果的に流れの状態を変化させることが可能な,回転を加えたCouette流れを解析対象に選び,動画像処理による精緻な流れ計測によりレイノルズ応力と乱流エネルギーの空間分布を定量化することで,それらの輸送量を議論した.そのために,レイノルズ応力輸送方程式を大・小2つのスケールに分離し,レイノルズ応力スペクトルの輸送方程式を導出するという独自の解析手法を提案した.提案手法による解析の結果,乱流エネルギーは大スケールから小スケールへ,レイノルズ応力は小スケールから大スケールへそれぞれ輸送されることを明らかにした.近年はさらに,直接数値シミュレーションを用いた研究により上述の議論が正しいことを裏付けている.

以上の成果は,乱流の自己維持機構における近年の理解促進においてオリジナルな視点に基づく独創的な業績であり,一般の壁乱流においても価値が高い.乱流のメカニズムに対する理解の促進にとどまらず,熱伝達や物質拡散の解析など,工学的にも波及効果と今後のさらなる展開が期待される.以上から,受賞者は流体力学の研究者として極めて有望であり,竜門賞にふさわしい.