Rosti,Marco Edoardo(沖縄科学技術大学院大学,複雑流体・流動ユニット)
The effect of compliant elastic walls on fluid flows
(a) M. E. Rosti, L. Brandt, Numerical simulation of turbulent channel flow over a viscous hyper-elastic wall, J. Fluid Mech. 830, 708-735, (2017)
(b) M. E. Rosti, M. N. Ardekani, L. Brandt, Effect of elastic walls on suspension flow, Phys. Rev. Fluids 4, 1, 062301(R), (2019)
(c) M. E. Rosti, L. Brandt, Low Reynolds number turbulent flows over elastic walls, Phys. Fluids 32, 083109, (2020)
本候補者は,乱流に対する柔軟壁の役割を明らかにするために,粘性を有する超弾性壁面におけるチャネル乱流のDNSを実行している.そこでは,流体領域内の流れはナビエ・ストークス方程式で記述され,固体層内では運動量保存則と非圧縮性条件が課され,これらの方程式は双方向に結合され,1つの連続体として定式化されている.結果として,チャネル内の乱流は弱い弾性であっても変形可能な壁による壁面垂直速度の影響を受けること,また,弾性の増加とともに平均摩擦係数が増加することを明らかにしている.さらに,壁の弾性は,古典的な剛体壁における乱流維持サイクルを大きく変化させ,変形可能な壁の近くに生成される流れ方向の縦渦と低速および高速ストリークを抑制するとともに,ローラーと呼ばれるスパン方向の構造を引き起こすことも見出している.また,これらの結果を拡張し,壁の弾性係数を適切に選択することで,任意のレイノルズ数で非定常カオス乱流のような流れを維持できることを示している.これは,中程度および高レイノルズ数では,乱流変動が壁の振動を活性化し,それが流体内の乱流レイノルズ応力を増幅させる一方で,非常に低いレイノルズ数では,唯一の乱流生成項である弾性壁からのエネルギー入力が壁の弾性とともに増加することに起因するものである.加えて,生物流体力学の観点から流体と構造の相互作用の問題についても検討している.具体的には,弾性チャネル内の剛体粒子による懸濁液のレオロジー挙動を調査し,弾性壁と剛体粒子の相互作用によって引き起こされる懸濁液のずり流動化(shear-thinning)挙動を特定し,これが,チャネル内の剛体粒子に作用する揚力から説明できることを明らかにしている.以上の研究成果は,層流から乱流に渡る,生物流れやマイクロ流れの制御から航空応用に至るまで,さまざまな分野で扱う単相流や混相流への貢献が期待できるなど高く評価できる.