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受賞者および選考理由(2021年度)(2) 

掲載日:2022年4月18日

受賞者

焼野藍子(東北大学流体科学研究所)

対象業績

壁乱流準秩序構造に着目した摩擦抵抗低減制御に関する研究

関連論文

(a) A. Yakeno, Drag reduction and transient growth of a streak in a spanwise wall-oscillatory turbulent channel flow, Phys. Fluids 33, 065122 (2021)

(b) A. Yakeno, Y. Hasegawa, N. Kasagi, Modification of quasi-streamwise vortical structure in a drag-reduced turbulent channel flow with spanwise wall oscillation, Phys. Fluids 26, 085109 (2014)

(c) H. Tameike, A. Yakeno, S. Obayashi, Influence of small wavy roughness on flatplate boundary layer natural transition, J. Fluid Science Tech. 16(1), JFST0008 (2021)

選考理由

本候補者は,スパン方向壁振動制御による乱流摩擦抵抗低減ついて,DNSにより摩擦抵抗の原因となる縦渦構造を圧力のラプラシアンを条件として位相平均により抽出し,制御によってスパン方向に強制的に傾けられる縦渦にかかるイジェクション(Q2)とスウィープ(Q4)の応力変化を調べている.その結果,Q2が低減するタイミングと振動周期による渦強化のタイミングが重なるときに,摩擦抵抗は最も低減することを見出している.そして,Q2の低減とQ4の増加を定量的に見積もり,縦渦の傾きの遅延がスパン方向速度せん断の加速度により整理されることに着目することで,これまでより優れた摩擦抵抗低減の予測式を提案している.この予測式は,スパン方向壁振動制御機構の説明だけでなく,より広範な制御機構の説明に適用できると考えられる.さらに,微細な波状の粗度分布が平板境界層の自然遷移に与える影響を,DNSにより調査し,遷移が遅延する波長が存在することを示している.その最も効果の高い波長は,TS波と同期する波長から十分離れており,二次渦のペアリングを早期に引き起こし,その後流まで渦の大きさを小さいまま維持する作用があることを明らかにしている.このように本候補者は,壁乱流の秩序構造,摩擦抵抗低減,および境界層遷移に関する研究に一貫して取り組み,それらのメカニズムの一端を明らかにして来ているなど高く評価できる.