渡邉智昭(名古屋⼤学⼤学院⼯学研究科)
安定密度成層下のせん断乱流の乱流構造と拡散現象に関する研究
(a) T. Watanabe, J. J. Riley, S. M. de Bruyn Kops, P. J. Diamessis, and Q. Zhou, "Turbulent/non-turbulent interfaces in wakes in stably stratified Fluids," J. Fluid Mech., Vol. 797, pp. 1-11, (2016)
(b) T. Watanabe, J. J. Riley, K. Nagata, R. Onishi, and K. Matsuda, "A localized turbulent mixing layer in a uniformly stratified environment," J. Fluid Mech., Vol. 849, pp. 245-276, (2018)
(c) T. Watanabe, J. J. Riley, K. Nagata, K. Matsuda, and R. Onishi, "Hairpin vortices and highly elongated flow structures in a stably stratified shear layer," J. Fluid Mech., Vol. 878, pp. 37-61, (2019)
自由せん断乱流において出現する乱流と非乱流領域の界面層は,乱流のエントレインメント過程において重要であり,これらの乱流の解析には乱流領域を適切に検出することが必要不可欠である.乱流領域の検出には,従来は渦度に着目して解析されてきた.一方,安定密度成層下では,内部重力波の存在により渦度が生じるため,従来の渦度による検出手法は適用できない.そこで本研究では,内部重力波が伝播しないポテンシャル渦を用いて,内部重力波を伴う流れ場から乱流領域を判別する新しい手法を提案した.この新手法により,安定成層時の乱流構造を,内部重力波の影響を分離することで,抽出・解析することに成功し,本研究の独創的な成果として評価できる.この新手法により,内部重力波が乱流場に及ぼす影響を定量化した.また,安定密度成層下の乱流混合層中のヘアピン渦などの乱流構造の特徴を見出し,さらに,大規模直接数値計算により,乱流混合層内における超大規模構造の存在を示し,これによる流れ場や乱流への影響を明らかにするといったように,流体力学全般への貢献度も高いと評価できる.こういった安定密度成層時の乱流に関する知見は,地球流体力学,機械工学,水理学など,関連分野への応用性も高い.応募者の研究業績は,主要論文以外にも,流体力学分野の著名な雑誌に掲載されたものである.これらの業績は,若手研究者として極めて優れたものであり,今後の発展が大いに期待できる.以上の理由により渡邉智昭氏は竜門賞にふさわしいと評価する.