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受賞者および選考理由(2019年度)(1) 

掲載日:2020年9月8日

受賞者

関本敦(大阪大学大学院基礎工学研究科 物質創成専攻)

対象業績

統計的に定常な一様せん断乱流の普遍的秩序構造の研究

関連論文

(a) A. Sekimoto, S. Dong, J. Jiménez: “Direct numerical simulation of statistically stationary and homogeneous shear turbulence and its relation to other shear flow”, Phys. Fluids, 28, 035101 (2016).

(b) S. Dong, A Lozano-Durán, A. Sekimoto, J. Jiménez: “Coherent Structures in Statistically Stationary Homogeneous Shear Turbulence”, J. Fluid Mech. 816, 167-208 (2017).

(c) Sekimoto, J. Jiménez: “Vertically localised equilibrium solution in the large-eddy simulations of homogeneous shear flow”, J. Fluid Mech. 827, 225-249 (2017).

選考理由

統計的に定常な一様剪断乱流(SS-HST)を一貫して研究しており,論文(a)ではSS-HST用の高精度DNS計算コードの開発が示されている.通常の計算におけるリメッシュの作業を回避した特殊な境界条件やコンパクトスキームを含むコードは著者のオリジナルであり,詳細な精度の検討も含めきちんと構築されている.パラメータを変えた数多くのケースの計算により,SS-HSTの計算空間依存性や普遍的な流れ場の構造をかなりの確信度を持って説明し,壁乱流の対数領域との類似性を示した労作である.同氏の研究グループ以外からの引用も多く,SS-HSTに関する最近の代表的論文と言える.今後有限の計算領域が渦構造に与える影響がより明らかになれば,壁乱流を含む剪断乱流の研究に大きな貢献をすることが期待される.論文(b)は上述のコードを用いて筆頭著者Dong氏が流れの構造理解を行ったもので,応募者の貢献度は高くないが,コードの応用性を示している.論文(c)ではコードをLESに拡張し,高レイノルズ数のSS-HSTの定常解や周期解をニュートン法で探索した意欲的な研究である.

SS-HSTに着目し,新たにコードを開発して乱流構造を解明しようとした点,LESを用いて高レイノルズ数の流れの解を探索した点などが独創的である.
流体力学への貢献度について一様剪断乱流を高精度に計算する手法を開発した点,丹念な計算でSS-HSTの近年の代表作と見られる成果を出した点で貢献度は高い.
関連分野への応用の可能性について,本研究で得られた渦構造や不変解の知見は剪断乱流一般の理解に役立つと考えられ,またすでに磁性流体や自然対流等の論文でも引用されており応用性は高い.

同氏の将来性について,流体力学,計算手法,流れ場の理解など十分な力量に基づいて丹念な研究を実施しており,今後も優れた研究成果を挙げて乱流研究に貢献することが期待される.以上の点から関本敦氏は竜門賞を受けるのにふさわしい.