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受賞者および選考理由(2018年度)(1) 

掲載日:2019年5月1日

受賞者

小澤啓伺(首都大学東京 システムデザイン学部)

対象業績

感温塗料計測法を用いた高速熱流体現象の解明

関連論文

(a) H. Ozawa, S. J. Laurence, J. Martinez Schramm, A. Wagner, K. Hannemann, “Fast-response temperature-sensitive-paint measurements on a hypersonic transition cone, ”Exp. Fluids, 56 (2015), 1853.

(b) H. Ozawa, “Experimental study of unsteady aerothermodynamic phenomena on shock-tube wall using fast-response temperature-sensitive paint,” Phys. Fluids, 28 (2016), 046103.

(c) H. Ozawa, J. Laurence, “Experimental Investigation of the shock-induced flow over a wall-mounted cylinder,” J. Fluid Mech., 849 (2018), 1009.

選考理由

従来,極超音速流における熱流束計測では,同軸熱電対の多数使用と空間分解能に優れた赤外線カメラを用いることが主流であった.小澤啓伺氏は,感温塗料計測法(Temperature Sensitive Paint, TSP)を,対象とする超音速熱流体現象に特化して高精度な二次元熱流束非定常計測法の開発を行った.具体的には,衝撃波管内において1ms 内におこる入射衝撃波,層流乱流遷移,ストリーク構造を熱流束分布により二次元で可視化することに成功している.また,同TSP計測手法を円錐模型と衝撃波との干渉実験に適用することで,境界層遷移位置を含めた非定常挙動の理解を深め,スクラムジェットエンジン空気取入口に適用した例では,燃焼室前での遷移現象を明らかにしている.

同氏は衝撃波現象という極めて短時間に起こる熱流動現象を対象に,最適なTSP材質の選定,詳細なキャリブレーション,測定誤差評価,高速度カメラの光学系の工夫により1MHzの温度サンプリングを可能とした.この手法により,非接触かつ二次元での非定常現象を理解する計測法の開発を達成している.超音速流現象の理解を促進するうえで,同氏の開発したTSP計測法は極めて有効と考えられ,理論やシミュレーション研究を発展させる基礎データを提供できることが期待される.

同氏は,継続して精力的な研究活動を行っており,今後更なる研究成果が期待できる.以上より,小澤啓伺氏は,今後の流体力学の発展への顕著な貢献を期待できる若手研究者として,竜門賞にふさわしいと評価する.