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受賞者および選考理由(2017年度)(2) 

掲載日:2018年5月1日

受賞者

北村圭一(横浜国立大学 大学院工学研究院 システムの創生部門)

対象業績

衝撃波において安定かつ高精度な流体計算手法の提案

関連論文

(a) K. Kitamura, P. Roe and F. Ismail, “Evaluation of Euler fluxes for hypersonic flow computations,” AIAA Journal, Vol. 47, pp. 44-53, 2009.

(b) K. Kitamura and E. Shima, “Towards shock-stable and accurate hypersonic heating computations: A new pressure flux for AUSM-family schemes,” Journal of Computational Physics, Vol. 245, pp. 62-83, 2013.

(c) K. Kitamura and A. Hashimoto, “Simple a posteriori slope limiter (Post Limiter) for high resolution and efficient flow computations,” Journal of Computational Physics, Vol. 341. pp. 313-340, 2017.

選考理由

北村圭一氏は,超音速流の安定かつ高精度な計算手法の開発を目指して,まず多種多様なスキームに対して体系的な数値実験を行い,衝撃波計算の不安定性として一次元性と多次元性にもとづくものが存在することを示すとともに,これらの不安定性が数値的に表現される衝撃波内部構造によることを明らかにした.

この知見をもとに,北村圭一氏は,衝撃波内部のみに働くマッハ数に比例した数値的散逸を加えた圧力流束と,全速度対応 AUSM 族スキームに基づく質量流束とを組み合わせた新しいスキームとして,SLAU2, AUSM+-up2, LDFSS2001-2を提案し,これらが堅牢な衝撃波捕獲特性を有することを示した.特に,SLAU2 はユーザー指定のパラメータのない使いやすいもので,宇宙・航空分野の飛翔体周り流れや自動車エンジン筒内流れを対象とした実用的な解析ソフトウェアにも実装されている.

さらに,北村圭一氏は,2 次精度の空間差分コードに対する簡便な“a posteriori slope limiter”を提案し,従来のものより高解像度の計算が可能であることを示した.以上で提案された計算手法は,いずれも高安定性と簡便さを両立させた実用性の高いもので,さまざまな超音速流体現象の解明とともに,宇宙・航空分野の高性能飛翔体や高効率内燃機関等の開発に対して,今後大きく資するものであると期待される.

北村圭一氏は,上記以外にも精力的に研究論文を発表しており,これからさらに多くの研究成果が期待できる.

以上より,北村圭一氏は,今後の流体力学分野を牽引する将来性豊かな研究者として竜門賞にふさわしいものと考える.