金田 行雄(名古屋大学大学院工学研究科・教授),石原 卓(名古屋大学大学院工学研究科・准教授),横川 三津夫(独立行政法人 理化学研究所),板倉 憲一(独立行政法人 海洋研究開発機構),宇野 篤也(独立行政法人 理化学研究所)
Y. Kaneda, T. Ishihara, M. Yokokawa, K. Itakura, and A. Uno, “Energy dissipation rate and energy spectrum in high resolution direct numerical simulations of turbulence in a periodic box,” Physics of Fluids, Vol. 15, L21 - L24 (2003).
著者らは地球シミュレータを駆使して一様等方性乱流の大規模DNS(40963)を実行し,実験的にも達成しにくい高レイノルズ数の乱流状態を数値的に実現することで,十分な慣性小領域を含む乱流データベースを構築した.そして,エネルギー散逸率が高レイノルズ数極限で粘性率に依存しないこと,慣性小領域におけるエネルギースペクトルがコルモゴロフの-5/3乗則から有意にずれることなどの基本的知見を明確に示している.
また,著者らの数値計算は,地球シミュレータ上でスペクトル法によって16.4 TFlopsの高速計算を実現したことが評価されて,2002年ゴードンベルの特別賞を授与されている [1].さらに,著者らのグループは得られた乱流データベースを詳細かつ慎重に解析することで,乱流統計量に関する数多くの知見をもたらし,2009年のAnnu. Rev. Fluid Mech. にその成果をまとめている [2].
以上のように,本論文は地球シミュレータの性能を存分に発揮させた日本を代表する研究であり,乱流現象の理解という流体力学における積年のテーマに真正面から取り組んで信頼性の高い結果を与えている.180件(2012年2月現在)にも及ぶ被引用回数も示すように,乱流研究のマイルストーンとして後世に大きな貢献を残している.その功績は永く高く評価されるべきものであり,日本流体力学会の論文賞に誠にふさわしい論文である.
[1] M. Yokokawa, K. Itakura, A. Uno, T. Ishihara, and Y. Kaneda, Proc. ACM/IEEE Supercomput. Conf., p. 50. Washington, DC: IEEE (2002).
[2] T. Ishihara, T. Gotoh, and Y. Kaneda, Annu. Rev. Fluid Mech., Vol. 41, 165-180 (2009).