今東昇一,栗山直久,酒井雅晴(㈱デンソー),三石康志,吉野悦郎(㈱ SOKEN)
車両空調用送風機の高効率・低騒音化技術の開発
ハイブリッド車,プラグインハイブリッド車では,エンジンの高効率化により低熱源化・低騒音化が進んでいる.従来のエンジン排熱を利用した暖房では熱源不足になり,停車時・低速時などではエンジン停止状態で室内騒音が目立ってくるため,車室内空調においては高効率で低騒音のエアコン開発が重要である.最近の車載エアコンでは低温外気と室内温空気を同時併用する内外気 2層による空調が用いられているが,内気・外気それぞれに対応したファンが必要なためその小型化・静音化が必須である.今東氏らは,これまで培ってきた回転翼間の非定常流れを可視化する手法を駆使して,可視化が難しいシロッコファン内部の流れの剥離・再付着の様子を世界で初めて計測し,騒音発生と効率低下の原因を特定するとともに低騒音化・高効率化への新たな着眼点を見出した.厚みが一定であった従来の2 次元翼形状の中間部を肉厚にし,縁部先端に角を持たせかつ流れに対して傾斜させた3 次元形状にすることで剥離開始点と再付着点を上流へ移動させ翼間剥離低減をはかった.加えて,ファン周囲のスクロール側壁の形状をも3 次元的にして翼間流速を周方向に均一にすることで,送風機体積を40%,電力20%,比騒音4dBの低減を達成した.
この技術では,内外気2層を用いるエアコン開発で積み重ねられた流体力学的知見がいたるところに活かされており,市場においても本製品は卓越したものとなっている.以上の理由により本技術は技術賞にふさわしいと評価する.