稲谷芳文 宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所宇宙航行システム研究系教授
石井信明 JAXA宇宙科学研究所宇宙航行システム研究系教授
山田哲哉 JAXA宇宙科学研究所宇宙航行システム研究系准教授
平木講儒 九州工業大学工学研究院准教授
藤田和央 JAXA研究開発本部未踏技術研究センター/研究領域サブリーダ
本田雅久 JAXA航空PG,D-SENDプロジェクトチーム/サブマネージャ
寺本進 東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻准教授
大津広敬 龍谷大学理工学部機械システム工学科准教授
中北和之 JAXA研究開発本部風洞技術開発センター/研究領域リーダ
山崎喬 JAXA研究開発本部風洞技術開発センター/主任研究員
鈴木宏二郎 東京大学大学院新領域創成科学研究科先端エネルギー工学専攻教授
小紫公也 東京大学大学院新領域創成科学研究科先端エネルギー工学専攻教授
鈴木俊之 JAXA研究開発本部究未踏技術研究センター/研究員
沢田恵介 東北大学大学院工学研究科航空宇宙工学専攻教授
安部隆士 JAXA宇宙科学研究所宇宙輸送工学研究系教授
藤井孝蔵 JAXA宇宙科学研究所宇宙輸送工学研究系教授
小惑星探査機はやぶさ回収カプセルの熱・空気力学設計
小惑星探査機はやぶさの回収カプセルは,直径約40cm,重量17kg の小型カプセルであり,7年の長期ミッションを終え最後に約12km/sの高速で地球大気へ再突入を行い,よどみ点での加熱率がスペースシャトルノーズでの値の30倍以上という過酷な空力加熱に耐えて,無事地上に到達した.
対象となる技術は,この空力過熱環境の正確な把握に基づく熱防御システムの設計,ならびにこのカプセルが再突入から地上に到達するまでの空力設計技術である.熱防御システム設計のためには,非平衡高温気流と耐熱材料の非常に複雑な反応の解明,種々の熱化学モデルの妥当性に左右され易い機体背面の輻射加熱の推算,乱流遷移による空力加熱増大の可能性を探る種々の実験,解析が綿密に行われており,一方,空力設計においては,自由分子流領域から遷移流,極超音速領域における空力係数の見積り,それを考慮した空力形状の設計,実飛行による妥当性の確認,極超音速空力加熱の推算に関わる実験及び解析技術が含まれる.特に,ディスク型のカプセル形状は遷音速時に動的不安定であり,遷音速通過時の機体運動の理解とパラシュートの放出方式の機能実証は高度な空力技術課題を解決している.これらの設計技術の確かさは,はやぶさの帰還により実証された.今回のカプセル回収は,熱流体力学の基礎研究の成果をダイレクトに設計に活かすことができる研究対象であり,費やされた努力と成果を考えると対象技術は技術賞に十分値する.
また,信頼性の確立が重要視され失敗が許されない宇宙開発プロジェクトにおいて,カプセルが無事回収できたことにより,常に裏方にいる熱流体グループにも光があたる機会が生まれ,この技術賞は流体力学の重要性をアピールする大きな機会ともいえる.