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技術賞 

流体力学の知見に基づく画期的かつ実用化された技術(製品やソフトウェアも含む)を開発したと認められる個人もしくは代表者とそのグループに授与する.ただし,過去10年以内に発表された技術を対象にする.自薦の場合には,応募時点で代表者は会員であること,他薦の場合には,推薦者が本会員であれば応募者は会員である必要はない.

受賞技術および選考理由(2021年度) 

受賞者

濱田慎悟,池田 孟,小林 孝(三菱電機(株))

対象業績

竜巻状旋回流を利用した高効率・軽量プロペラファン

選考理由

空調機室外機のプロペラファンは,ヒートポンプの熱交換器を通風させるためには欠かせない基幹部品であり,その高効率化は空調機の省エネルギー化に欠かせない重要な技術である.プロペラファンの送風効率改善には羽根の薄肉化が有効であるが,翼の風圧変形及び破損を防ぐために,一般的にはガラス強化繊維やマイカ(雲母)を配合したポリプロピレン樹脂が使用されている.しかし,本材料は分別が困難でリサイクル性が低く,環境負荷低減に向けた樹脂使用量の削減努力が必要となる.これに対して本技術では,樹脂材料には通常のものを用いつつ,プロペラファン中心部の軸受け円筒ボス部構造を改良して軽量化を達成するとともに,送風効率を改善するために軸受け部にターボ型リブを配置し,軽量・高剛性及び送風効率向上を両立させた新型ファンを開発した.構造解析に基づく分析から耐振動用の強度リブを適切に配置して高剛性を確保しつつ,LESによるCFD解析を駆使してリブ形状によって後流を制御でき,ファン効率の改善に繋がることを見出した.最終的には,中央部で竜巻状旋回流を生み出すターボ型リブの改良により,ファン単体での送風効率は動作点において約7%,最高効率点において約6%の改善を達成した.その結果,従来のボス付きファンと比較して重量を18%削減し,リサイクル困難な樹脂の使用量削減に貢献し,室外機に搭載した状態での消費電力は4%削減され,着霜を模擬した高圧損試験においても,従来ファンよりも低消費電力となった.また,ボスが無いため梱包時の段積み数は7から11個に増加し,輸送効率改善に貢献している.低コスト,軽量・高剛性,省エネルギー性,低環境負荷を同時に満たすことから,筐体サイズの異なる多くの室外機で製品展開され,累計生産台数は全世界で540万台に達している(2020年度までの実績).他社製品との比較でも軽量性およびファン効率ともに最も高い性能を示しており,優位性は際立っている.2020年度において同社製のルームエアコン室外機ファンの71%が本タイプに置き換えられて販売されており,実用化は十分と言える.なお,本技術による消費電力の削減と2020年度国内出荷台数(96万台に装着)から概算すると年間2751トンのCO2削減に貢献している.以上から,本技術は流体力学的知見を含んだ新規性の高いものといえ,技術賞に値する.

過去の受賞技術 

・ 2020年度受賞技術
低雑音化を実現したプローブ・ブリッジ回路一体型コンパクト熱線風速計
・ 2019年度受賞技術
該当なし
・ 2018年度受賞技術(1)
実走行条件での定量評価を可能とした流速変動制御による風洞実験技術の開発
・ 2018年度受賞技術(2)
車両空調用送風機の高効率・低騒音化技術の開発
・ 2017年度受賞技術
該当なし
・ 2016年度受賞技術
該当なし
・ 2015年度受賞技術
該当なし
・ 2014年度受賞技術
バルーン状大気泡を用いた間欠吐水技術の開発と省エネ温水洗浄便座の普及
・ 2013年度受賞技術
該当なし
・ 2012年度受賞技術
該当なし
・ 2011年度受賞技術
該当なし
・ 2010年度受賞技術
小惑星探査機はやぶさ回収カプセルの熱・空気力学設計
・ 2009年度受賞技術
該当なし
・ 2008年度受賞技術
風レンズ風車(超高効率風力発電システム)の開発
・ 2007年度受賞技術
「エアコン上下両開きロングパネル方式気流制御技術」