Experimental study of internal wave generation by convection in water
Michael Le Bars, Daniel Lecoanet, Stéphane Perrard, Adolfo Ribeiro, Laetitia Rodet, Jonathan M. Aurnou and Patrice Le Gal
2015年,第47巻,4号,045502
今から半世紀前,Townsend (1964) は,地球や惑星大気における内部波の発生と類似した状況を室内で実現するために,4◦C で密度が最大値をとる水を使用する実験を提唱した.このシステムにおいては,安定密度成層領域が対流層の上に乗っかり,くっきりとした変形可能な界面がこの2つの領域を分かっている.本論文は,真空ガラス容器を用いて側壁の断熱化に工夫を凝らして,Townsend の 4℃ 実験を見事に実現した.対流層内の流れが乱流になるようレイリー数を十分に高くとっている (Ra = 5 x 106 - 5 x 107).乱流状態にある下層の対流によって,上層の密度安定成層領域で内部波が励起される.本論文は,乱流対流による内部波生成の様子を観察・測定し,その性質を定性的かつ定量的に特徴づけた基礎研究である.
対流層内およびその上部の広い領域にわたる温度場および PIV による速度場の高精度の測定を行い,2 種類の波を同定した.一つは,対流周波数ぐらいの低周波でかつ長い水平波長をもつ.もう一つの波は,浮力周波数に近いがそれより若干低く目の周波数をもち,水平波長は短い.低周波数の長波は界面付近に集中し,上部に伝播するにつれて急激に減衰する.高周波数の短波の減衰の仕方は弱い.全領域にわたる温度場と速度場の測定が,これら2種類の内部波の放射によって,いかに対流層のエネルギーが安定成層領域に汲み上げられるのかを解き明かし,その割合を定量的に評価することを可能にした.エネルギーの大部分は,低周波数の長い水平波長をもつ波によって運ばれる.
この実験が発想されたのはずいぶん昔のことであるが,今日におけるそれの印象的な実現は,セットアップにおいても,測定においても,そしてその解析においてもでオリジナルである.領域全体にわたる温度場と速度場の高精度測定によって,対流領域と波動領域のエネルギー収支をあいまいさのない形で解明したことは特筆すべきである.
以上の理由から,FDR編集委員会は,本論文を第9回FDR賞にふさわしい論文であると決定した.
FDR編集委員長 福本康秀