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第6回FDR賞(2013年受賞) 

掲載日:2013年3月27日

論文題目:

The finite-difference lattice Boltzmann method and its application in computational aero-acoustics

著者:

Michihisa Tsutahara
蔦原 道久(神戸大学名誉教授)

掲載年巻号頁:

2012年,第44巻,4号,045507

 本論文は,差分格子ボルツマン法とそれを用いた空力音響解析に関するReview論文である.格子ボルツマン法は,一般的には仮想的な流体粒子の密度分布関数の発展方程式を規則的な格子上で解く流体の数値解析手法である.しかし,そのままでは物体周りの高マッハ数圧縮性流れの安定な解析が極めて難しいという欠点がある.そこで著者は,格子ボルツマン方程式を曲線座標上において差分法で解く差分格子ボルツマン法に着目し,時間刻みの自由度を高めた独自の手法を提案して,圧縮性の熱流体流れを効率的に解析する道筋を示してきた.本論文は,その手法について詳しい解説を行うとともに,著者がこれまでに行った各種の空力音響解析に関する研究を集大成したものである.
 具体的には,著者の提案した差分格子ボルツマン法について論じた後,最初の計算例として遷音速域の円柱周りに発生するエオルス音の解析を示している.そして,移動物体周りに生じる音場解析のためにArbitrary Lagrangian Eulerian法を差分格子ボルツマン法に導入する方法について議論している.さらに,この手法を用いることによって,高速列車がトンネル内に進入した際に生じる圧縮波がトンネル内を伝播し出口から微気圧波として放射される有限振幅音波の伝播問題を,移動格子を用いて解析できることを紹介している.つぎに著者は,密度差が大きく圧縮性がある気液2相流れの音響解析をするための手法として,2種類の流体粒子を取り扱う2粒子モデルを差分格子ボルツマン法に組み込む方法,および疑似流れの発生を抑える表面張力モデルについて論じている.そして,これらの手法を用いれば,水滴が水面に衝突する際に生じる音波の気相と液相中の伝播を同時に精度良く解析できることが示されている.最後に,霧の中を伝播する音波が減衰する現象のメカニズムを解析したあと,差分格子ボルツマン法による音場解析の高い可能性について議論している.
 本論文において,自らの一連の研究で開発した圧縮性流れの効率的解法である差分格子ボルツマン法について著者が詳しく解説し,各種の空力音響問題を精度よく解析するための新しい考え方を示した点は高く評価される.また,差分格子ボルツマン法について具体的な計算例を示しながら体系的に解説を行ったことは,実用的な計算空力音響解析を新たに目指す研究者にとっても大変有用であると思われ,本論文は今後の計算空力音響解析の研究と応用の発展に大きく貢献すると思われる.なお本論文は, FDRへの掲載以来,多くの海外の読者にも注目されており,昨年4月の掲載以降のダウンロード数は約1000に達している.このことも本論文の及ぼす影響が大きいことを顕著に示していると思われる.
 以上の理由から,本論文を第6回FDR賞にふさわしい論文であると判断した.

FDR編集委員長 船越満明

 

 
 
 
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