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第4回FDR賞(2011年受賞) 

掲載日:2011年6月29日

論文題目:

Baroclinic multipole formation from heton interaction

著者:

Mikhail A Sokolovskiy and Xavier J Carton

掲載年巻号頁:

2010年,第42巻,4号,045501

渦は中程度のあるいは大きいレイノルズ数の流れにおける普遍的な構造であり,渦の構造や相互作用に関する研究は,流体力学の理論,実験,観測にかかわる研究者にとって興味深いだけでなく,流体混合や温度,塩分などの輸送などにも深く関係している.そして,とくに大気や海洋における流体運動をモデル化する際には,近似的に2次元的な渦構造が重要となる.
へトンは,回転成層流体中の近似的に2次元的な2重極渦であって,温度アノマリーを輸送し,メキシコ湾流のような流れに伴う輸送の問題にも関係している,重要な渦構造であるが,本論文においては,このヘトンの相互作用が調べられている.すなわち,回転2層流体における2つの反対符号のヘトンの相互作用およびその後の漸近状態が,さまざまな初期配置やロスビーの変形半径の値に対して包括的に調べられている.
本論文では,この相互作用を,点渦モデルに基づいて調べるとともに,有限の大きさの渦領域の場合についてもコンターダイナミクスを用いて数値的に調べており,渦のさまざまなタイプの相互作用や漸近状態が示されている.具体的には,まず有限渦領域の計算においては,ヘトンの初期配置や変形半径の値に依存して,2つのヘトンが,水平2重極(horizontal dipole)と呼ばれる同じ層にある正と負の渦がカップルした状態に漸近していく場合,鉛直から傾いた2重極(vertically tilted dipole)と呼ばれる上層の渦と下層の反対符号の渦が少しだけずれた位置でカップルした状態に漸近していく場合,ほぼ同じ位置にある上下層の渦に一方の層の渦がすぐ横に付け加わった形の状態(L-shaped dipole)に漸近していく場合,ほぼ同じ位置にある上下層の渦のすぐ横に異なる位置の上下層の渦が付け加わって3個の渦からなるように見える状態(Z-shaped tripole)に漸近していく場合,などが見られることが示されている.また,点渦モデルに基づく計算では,適当な座標系を用いた解析的な計算によって,有限渦領域の計算で得られた漸近状態が,L-shaped dipoleを除いて導けることを示した.
本論文の研究は,地球流体力学において重要なヘトンの相互作用に関する大きな貢献であると考えられ,また,この研究で得られた結果は海洋運動のデータの解析においても有用であると考えられる.そして,この研究をもとに,流体力学に関する新しい研究が今後発展していくものと期待される.

FDR編集委員長 船越満明

 

 
 
 
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