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会長就任にあたって 

2021年度会長  山本 誠
2021年度会長
山本 誠

このたび,福本康秀会長の後を引き継いで,2021年度の会長を務めさせていただくことになりました東京理科大学の山本誠でございます.新型コロナウィルスが世界中で猛威を振るい一向に終息の兆しが見えない中,本会の活動が低調に陥らず,逆に一層活性化するように本会の運営に微力を尽くしたいと思いますので,会員の皆様のご支援とご協力をよろしくお願い申し上げます.

さて,会員の皆様がご存じの通り,最近注目されている社会的取組として,SDGsと脱炭素社会の実現を挙げることができます.いずれの取組も社会全体,人類全体に関わるような課題をグローバルな視点から解決することが求められ,我が国や国連が積極的に推進を図っています.これらの取組の中には,流体力学・流体工学によって大きな貢献を期待できるテーマが多数あるように思われます.例えば,SDGsには,2030年達成を目指して,17のゴール(大目標),169のターゲット(個別目標)が設定されていますが,ゴール3「すべての人に健康と福祉を」では,有害化学物質ならびに大気・水質及び土壌の汚染による死亡および疾病の件数を大幅に減少させること,ゴール7「エネルギーをみんなに,そしてクリーンに」では,再生可能エネルギーを大幅に拡大することや,エネルギー効率を著しく改善すること,ゴール13「気候変動に具体的な対策を」では,気候変動に起因する危険や自然災害に対する強靭性を強化すること,ゴール14「海の豊かさを守ろう」では,あらゆる種類の海洋汚染を防止し,大幅に減少させることなどを具体的な目標として掲げています.これらの課題あるいは関連する課題を解決するためには,本会会員の皆様のこれからの研究開発の成果が社会から求められていると言えるでしょう.

ところで,会員の皆様は,本多光太郎博士をご存じでしょうか?本多先生は,戦前戦後に活躍された物理学者・金属工学者で,東北大学総長を退任された後に,私の勤務する東京理科大学で昭和24年から初代の学長を務められました.本多先生は名言を多数残されていますが、「産業は学問の道場なり」は特に有名ではないでしょうか.この言葉は,現実の産業界の問題を解決しようと努力する過程で学問が磨かれ,新たな学問領域が醸成され,学問が進化して行くことを喝破しています.現在の状況に照らしてみると,「SDGs・脱炭素社会の実現は,産業と学問の道場なり」と言い換えられるでしょう.SDGsや脱炭素社会の課題に挑戦する過程で,新たな産業や学問分野が数多く創造されるように思われます.

本会は,物理学,地球物理学,天文学,気象学,化学,生物学,医学,建築学,土木工学,原子力工学,航空宇宙工学,船舶海洋工学,化学工学,医療工学,機械工学など多岐にわたる学問領域の中で,流体力学・流体工学を専門とする方々から構成されています.流体という共通言語を用いることで,これら多くの学問分野を横断し,様々な課題を解決できる極めてユニークな組織です.その意味で,SDGsや脱炭素社会の実現に本会会員が果たすべき役割は,極めて重要だと言えるのではないでしょうか.

世の中には,流体力学・流体工学は古典的で発展が望めないという方がいますが,上述のようなことを考えると,“まったくそんなことはない”と断言できます.もちろん,細かい学問領域や技術分野は栄枯盛衰(新陳代謝?)がありますが,流体力学・流体工学としての重要性や発展性に一片の曇りもないように思われます.

最後に,本会は2018年度(平成30年度)に創立50周年を迎え,100周年に向けて第二段階に入っています.次の時代を切り開く会員の皆様,特に若手の研究者・技術者の奮起と,本会を共に盛り上げていただけることを心から期待し,会長就任の挨拶に代えさせていただきます.1年間,何卒よろしくお願い申し上げます.