このたび,2024年度の日本流体力学会会長を拝命いたしました東京工業大学の店橋護でございます.高木周前会長(東京大学)の後を引き継ぎ,河原源太副会長(大阪大学)をはじめ2024年度の理事の皆様,各種委員会委員長及び委員の皆様とともに,日本流体力学会の発展に貢献いたしたく存じます.
近年,日本流体力学会の運営方針を定める際には2021年にまとめられた「ビジョンFluid Mechanics 2030, ~力学を基盤とするハブ学会~」(FM2030)の提言が非常に重要となっております.これは,本会の若手会員が長い時間をかけて議論されてまとめられたものでございます.歴史ある学会では,得てして保守的な運営となるところでございますが,本会の場合はFM2030の提言が一つの刺激となり,少しずつではございますが改革が行われております.
本会は,1968年に設立された流体力学懇談会を起源として,1982年に流体力学会として改組・改名され,1993年に社団法人日本流体力学会,2012年に一般社団法人日本流体力学会として認可されております.本会の設立の趣旨と目的には,「流体力学は物理・気象・海洋・天文などの理学や,航空・機械・土木・船舶・建築・化学工学などの工学,さらに医学・生物学・農学などにも関連して広く研究され応用されている.しかし,違った分野の研究者間の交流は必ずしも十分ではなく,流体力学の研究者を横につなぐことを目的として本会を設置した」と書かれております.FM2030の提言には,~力学を基盤とするハブ学会~とサブタイトルが付けられておりますが,まさに流体力学を基盤としたハブ学会が本会の設立当初からの目的であったことになります.本会では,年会と数値流体力学シンポジウムの二つ大きな主催講演会がございます.年会は30以上の学協会,数値流体力学シンポジウムは20以上の学協会からの協賛を得て長年開催されており,このことは流体力学が多くの分野で必要とされている基盤学術であることを示すものでございます.
近年,流体力学に関わる大きな出来事として,科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究事業「さきがけ」に「複雑な流動・輸送現象の解明・予測・制御に向けた新しい流体科学(複雑流動)」が研究領域として設置されたことがございます.戦略目標にこの課題が取り上げられるには,多くの会員の皆様,流体力学に関連する学協会の皆様の大変なご尽力があったものと存じます.昨年,東京農工大学で開催された年会では,このさきがけ領域とのコラボレーションセッションが開催され,さきがけに採択された新進気鋭の若手研究者から大きな刺激を頂きました.また,さきがけ研究者からも普段の参加している学会とは異なる視点から流体力学的に深い議論をさせて頂けたとの感謝の声も届いております.これを機に本会に入会頂いたさきがけ研究者も数多くいらしたとのことでございます.今年の年会は仙台市で開催される予定でございますが,JSTさきがけ領域からの要望もあり,同様なさきがけコラボレーションセッションが開催される予定でございます.是非とも若手流体力学研究者との交流を活発に行って頂き,このような活動を通じて将来的に本会が流体力学を基盤とするハブ学会として認知されることにつながることを願っております.また,本年の年会では,本会の礎を築かれてきた今井功先生,巽友正先生のご業績を顧みる特別セッションが企画されます.このような機会に,歴史ある日本流体力学会の学術的基盤をいま一度振り返って頂ければと存じます.
本会設立の趣旨と目的に則り,異なる分野の流体力学研究者が,自由活発に議論,情報交換できる場を提供できますよう微力ながら努力させて頂きたく存じますので,ご支援を賜りますようお願い申し上げます.