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会長就任にあたって 

2020年度会長  福本康秀
2020年度会長
福本 康秀

令和2年度の会長を拝命いたしました福本康秀です.微力ながら本会の発展に一所懸命取り組む所存でございます.どうぞよろしくお願いいたします.

2020年は,7月後半からの東京オリンピック,8月下旬のミラノでのICTAM(理論応用力学国際会議)と4年に1度の大きなイベントを控えたスペシャルイヤーで・・・という書き出しでこの挨拶を始められればよいのですが,奇しくもあの大震災と同じ3月11日にWHOからパンデミック宣言が出されました.SAARSやMERSの流行は地域限定的でしたが,今回の新型コロナウィルスの感染拡大は全(pan)人類(demic)を巻き込む地球規模のもので,3月半ばの時点で,流行の中心が中国からヨーロッパに移っています.米国でも非常事態宣言が出されました.我が国もいまだ拡大局面です.このパンデミックが速やかに終息することを祈るばかりです.

感染の爆発的広がりは,人やモノの国境を越えた移動の加速と無関係ではありません.本会の前身である流体懇談会が設立された1968年当時,海外旅行は庶民の夢で,ICTAMには代表者のみが参加できました.故今井功先生などが日本人のすべての論文をまとめて発表され,その明晰さが出席者を驚嘆させたという話を外国人から直接聞いた記憶があります.80年代後半,円高が進むとともに海外に出かける日本人が急増し,外国の著名な先生の前でも臆せずに英語で発表できる大学院生を見かけるようになりました.海外の往来が増えた背景には,航空機性能の向上があります.シドニーとロンドンを19時間で結ぶ直行便の運航が計画されています.

我が国でも,最近,自前の小型ジェット機の開発を行うようになりましたが,戦前,航空機開発で世界の列強としのぎを削っていました.東京帝国大学航空研究所を中心とするチームが,長距離飛行世界一を目指したプロジェクトを実施し,1938年,関東上空の周回コースで,総飛行距離と飛行速度の両方で世界記録を樹立しました.やがて太平洋戦争に突入し,戦後,GHQによる航空機開発禁止という運命をたどります.故河田三治先生のプロペラ理論を調べる中でこの史実に出会いました.日本の流体力学の実力は黎明期から相当なものでした.今日,我が国の研究力の相対的低下が,様々な統計指標に顕れています.短期間でゼロから世界のトップに躍り出た先人たちの奮闘努力には勇気づけられます.

学会は,同好の士が集って,楽しく交歓しながら有益な情報交換を行う場です.年会と数値流体シンポジウムは本会の2大イベントです.会誌「ながれ」と原著論文誌「Fluid Dynamics Research」は重要コンテンツです.これらの中身の充実,そして,ホームページの利便性の向上をはかるなど,会員の皆様へのサービス向上に努めてまいります.

流体力学は,工学や理学の多様な分野にまたがる広範な学問ですが,本会への参画はごく一部です.企業研究者や女性研究者の取り込みも課題です.大林茂前会長の発案で,ワーキンググループ「Fluid Mechanics 2030」を設置し,将来を担う中堅・若手が,10年後の流体力学や本会のあるべき姿について議論を重ねています.9月に山口大学で開催される年会2020の中で,パネルディスカッションを実施し,行動計画策定を行います.また,12月の数値流体力学シンポジウムの沖縄開催が実現しました.

本来,大所高所から本会の来し方行く末を論ずるべき巻頭言が,私的な雑感になりましたことをどうかご容赦ください.本会の主役はあくまで会員の皆様です.本会の活動が,皆様のご活躍の一助となり,ひいては流体力学の発展につながりますことを切に願っております.最後になりましたが,6年間にわたり事務局長として本会運営を献身的に支えてくださった美細津恵一郎様が,本年2月をもちましてご退職されました.どうもありがとうございました.後任には進藤重美様にご就任いただいております.