私達の身のまわりには空気や水に代表される「流体」が日常的に存在しています。これらの流体が運動していわゆる「流れ」を作り,人間生活に種々の影響を与えております。この「流れ」を物理学や工学の目で捉え,その根底にある自然の仕組みを理解し人類社会に役立てようとするのが流体力学の主な目的であります。
流体力学は物理・気象・海洋・天文などの理学や,航空・機械・土木・船舶・建築・化学工学などの工学,さらに医学・生物学・農学などにも関連して広く研究され応用されております。しかしながら,違った分野の研究者間の交流は必ずしも十分ではありませんでした。同じことを表現するのに異なった用語を使ったり,似た研究でありながらお互いに気付かないということがしばしば起きていました。
そこで,流体力学の研究者を横につなぐことを目的として,本会の前身である流体力学懇談会が1968年(昭和43年)に設立されました。その横断的機能をさらに高め,会員相互の連絡を密にすると共に,国際交流をも促進するために,1982年(昭和57年)に同会を改組し,「日本流体力学会」と名を改めました。以来,学会誌「ながれ」および英文の国際学術誌「Fluid Dynamics Research」の定期刊行,学術講演会(主催シンポジウム,テーマシンポジウム等)の開催,さらに内外研究団体との連絡・協力など,多岐にわたり学術方面で実績を挙げてまいりました。
流体力学の研究を盛んにすることは,流れに関する未知の自然現象の基本的理解を高めるだけでなく,現実の未解決の問題(例えば,豪雨,竜巻,津波といった自然災害,およびウイルス飛沫感染,環境汚染等への対策,ものづくりやエネルギー利用の高効率化など)に大きく貢献するものと期待されています。このようにして学術上の実績および社会的公益性が評価され,1993年(平成5年)に文部省から社団法人日本流体力学会の設立が認可されました。その後2008年(平成20年)の「一般社団法人および一般の社団法人に関する法律」の施行に伴い,2012年(平成24年)1月から一般社団法人日本流体力学会が認可され新しく発足致しました。