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受賞者および選考理由(2011年度)(1) 

受賞者

板野 智昭(関西大学システム理工学部・准教授)

対象業績

平板間ミニマム流れの周期解

関連論文

(a) S. Toh and T. Itano, “A periodic-like solution in channel flow,” J. Fluid Mech., Vol. 481, 67-76 (2003).

(b) S. Toh and T. Itano, “Interaction between a large-scale structure and near-wall structures in channel,” J. Fluid Mech., Vol. 524, 249-262 (2005).

(c) T. Itano and S. C. Generalis, “Hairpin vortex solution in plane Couette flow: a tapestry of knotted vortices,” Phys.Rev.Lett., Vol. 102, 114501:1-4 (2009).

選考理由

乱流の発生条件とその物理的説明・維持機構・流れ場の構造・統計的性質など,乱流に関してはまだまだ数多くの問題が未解決のまま残されている.従来の乱流研究は,主に一様等方性乱流の統計的性質や渦構造を調べる研究と境界層乱流などの平均速度場などを議論する研究に二分されており,それらの連携は十分ではなかった.ところが,ここ10年間ほどの間に,2平板間流れのモデルであるミニマム流れなどの不安定周期解などが求められ,乱流との関係を議論する方向が示され,流れの安定性理論における分岐解析などの研究との接点が見つかり始めている.

今回,竜門賞の候補となった板野氏の研究業績もその一翼を担うものであり,この研究は日本の研究者が始め,日本の研究が世界をリードしている.板野氏の受賞対象となった論文は3編である。そのうちの2編(J. Fluid Mech., 2003年および2005年)は藤氏との共同研究であり,圧力勾配の下で流れる2平板間流れをモデル化し,平板に平行な2方向に空間周期性を課したミニマム流れの時間周期解を不安定周期解探査の方法により求めた.この解は不安定であり,その時間周期性は証明がなされていないが,乱流の流れ場がもつ縦渦とストリークの構造をよく表している.また,2005年の論文では乱流の大規模構造と壁付近の乱流場との相互作用を論じている.残りの1編(Phys. Rev. Lett., 2009年)はジェネラリス氏(S. C. Generalis)との共著論文であり,平面クエット流における不安定周期解を求めるために,鉛直平板間流れから平面クエット流を結ぶホモトピー変換を導入し,平面ポアズイユ流の場合と同様の方法で不安定周期解を求め,その流れ場の構造を議論している.平面クエット流においてはこれまで見つけられていなかった対称ヘアピン渦形状の定常解を見つけ,実験で得られている境界層乱流の構造を表す解として注目される.

以上のように,受賞候補者は,日本で始められた乱流の新しい研究の方法を踏襲し,さらに発展させ,流れの安定性解析や壁面乱流の実験的研究との橋渡しをする研究成果を得ている.これらは流体力学における今後の発展にも大きく貢献することが期待される.