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受賞者および選考理由(2010年度)(2) 

受賞者

鈴木崇夫(The Boeing Company, Acoustics & Fluid Mechanics)

対象業績

数値流体力学と実験流体力学の融合による噴流の不安定波と放射音の研究

関連論文

(a)    T. Suzuki and S. K. Lele, “Shock leakage through an unsteady vortex-laden mixing layer: application to jet screech,” J. Fluid Mech., Vol. 490, 139–167 (2003).

(b)    T. Suzuki and T. Colonius, “Instability waves in a subsonic round jet detected using a near-field phased microphone array,” J. Fluid Mech., Vol. 565, 197–226 (2006).

(c)    T. Suzuki, H. Ji, and F. Yamamoto, “Instability waves in a low-Reynolds-number planar jet investigated with hybrid simulation combining particle tracking velocimetry and direct numerical simulation,” J. Fluid Mech., Vol. 655, 344–379 (2010).

推薦理由

噴流は様々な工学分野で重要な役割を果たす基本的な流れであると同時に,様々な流体現象を内蔵する流体力学の宝庫ともいえる流れである.このため,研究の歴史は古く,さまざまな視点から多面的な研究が行なわれてきた.しかし,今日においても未解決問題が多く残されている.

受賞候補者は,気体の超音速噴流の側面からの衝撃波の漏れとそれによる音の生成のメカニズムを,圧縮性ナヴィエ‐ストークス方程式の直接数値シミュレーション(DNS)とそのデータを用いた幾何音響学的考察により明らかにした.また,亜音速噴流について,側面で発生する不安定波動を,噴流周辺に円錐状に設置した多数のマイクロフォンによる圧力測定によって検出する方法を提案した.マイクロフォン群の設置場所は過去のDNSによるデータに基づいて決定され,測定した圧力データからどのようにして波動を検出するかには,音源探査の方法が活用されている.さらに,実際にこの方法を使って不安定波の検出に成功している.

一方で,非圧縮性噴流に関する研究でも成果を上げている.そもそも,実験によって測定できるデータは限られており,さらにデータは通常ノイズを含むため,実験データから抽出できる物理量の挙動に関する情報は非常に限られている.候補者は,実験によって観測される非定常速度場をナヴィエ‐ストークス方程式に基づく直接数値シミュレーション(DNS)に取り込むことによって,実験データに基づく流れの非定常特性を再構築する方法を提案した.これによって,直接測定しない物理量(たとえば圧力)がノイズを軽減した形で求められる.実際にこれを水のジェットに応用して,せん断層内に生じる不安定現象を抽出することに成功している.この方法は,実験データから様々な必要な情報を引き出すのに非常に有力である.

以上のように,受賞候補者は,難しい問題に様々な方法を駆使して挑戦し,理論,数値流体力学,実験流体力学を融合させた独自の研究手法を確立した.また,それを通じて得られた研究成果の蓄積は高いレベルに達している.受賞候補者が確立してきた手法は,今後の流体力学研究において重要な役割を果たすことが期待できる.