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第8回FDR賞(2015年受賞)受賞論文決定 

第8回FDR賞(2015年受賞)は,以下の論文に授与することが決定しましたので,お知らせします.

論文題目:Periodically bursting edge states in plane Poiseuille flow

著者:Stefan Zammert (Philipps-University of Marburg, Germany) , Bruno Eckhardt (Delft University of Technology, the Netherlands)

掲載年・巻・号・論文番号:2014年,第46巻,4号,041419 

 今世紀初頭から,平面クエット流や平面ポアズイユ流,さらには,パイプ流など剪断流の乱流遷移に関する理解が急速に深まった.これらの流れに共通するのは,層流は無限小撹乱に対して安定であるが, 動的に活発な乱流状態が共存していることである.仮にこれらの状態が2つのアトラクターであるならば,解空間で,このベイスンを分かつ境界が存在するはずである.現実はもっと複雑で,カオス的振る舞いをする領域があるので,ベイスン境界の概念を拡張する必要があり,撹乱の寿命をその指標に用いることが提唱された.この寿命によって,解空間が層流領域とカオス領域に分かれ,その境界を「カオスのエッジ」という.さらにエッジ上にある軌道は,エッジ内のアトラクターに落ち着く.これを「エッジ状態」という.剪断流の乱流への遷移,さらには乱流そのもの現代的理解において,大きな役割を果たすのが厳密秩序状態(exact coherent state)である.エッジ状態は,厳密秩序状態を直接掴まえることができる.
 S. Toh & T. Itano: J. Fluid Mech. 481 (2003) 67-76はエッジ追跡法という数値計算法を考案した.エッジの多様体から外に出る不安定方向が1つであることを利用して,エッジ内に留まるようパラメターを調整する.たとえば,ニュートン法では初期条件をうまく選ばないと所望の解には収束しないが,エッジ追跡法はロバストで任意の初期条件からエッジ状態に収束させることができる.本論文では,エッジ追跡法を亜臨界状態(Re<5772)にある平面ポアズイユ流に適用し,広範なレイノルズ数にわたって(2000~4200)エッジ状態を計算し,厳密秩序状態を同定している.本論文では,さらに対称性を手がかりに高精度で周期解を検出し,レイノルズ数によって3種類の異なる周期解が存在することと解の分岐を解明している.多重解,解を経巡る非定常な振舞いも捉えている.また,漸近吸い込み境界層(Asymptotic suction boundary layer)の周期解との類似によって,秩序構造がスパン方向に局在していることも明らかにしている.
 著者らは,エッジ追跡法によりエッジ状態が非定常であることをはじめて明らかにし,エッジ状態の多くの様相を特徴づけた.

 以上の理由から,FDR編集委員会は,本論文を第8回FDR賞にふさわしい論文であると決定した.

FDR編集委員長 福本康秀