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第7回FDR賞(2014年受賞) 

論文題目:

Inertial waves in a spherical shell induced by librations of the inner sphere: experimental and numerical results

著者:

S. Koch, U. Harlander, C. Egbers (Brandenburg University of Technology, Germany), R. Hollerbach (ETH Zurich, Switzerland)

掲載年巻号頁:

2013年,第45巻,3号,035504

 本論文では,同心の内外2球の間の流体の,球の中心を通る共通の軸の周りの2球の回転によって引き起こされる運動について,実験と数値計算の両方で調べている.ここで,外球は一定の角速度Ωで回転するが,内球の回転角速度はΩ+εcosωt とΩの周りで周期的に変動する場合を考えている(は時間).この問題の重要なパラメータは、内球の角速度の変動の無次元振幅Ro=ε/Ω(≦1)と無次元振動数ω/Ω (≦2),およびエクマン数E = ν/(Ωr i2)である(ν は流体の動粘性係数,ri は内球の半径).

 実験においては,アルミ粉法で流れの可視化が行われ,振動数ωの慣性波の特性曲線と同じ傾きをもつ内球上の場所(臨界緯度)におけるこの慣性波の励起と,この特性曲線に沿った慣性波の波束の伝搬に対応する結果が得られている.また,Roが小さくない場合には,ωの整数倍で2Ωよりも小さい振動数をもつ高調波の励起も示されている.さらに,角速度Ωの回転系での流体速度の定常成分は,球の回転軸に平行で内球に接する円筒付近で見られる帯状流が主要なものであり,それは球の回転と同方向に流れておりEが減ると増加する傾向があることも示されている.また,Roが大きくなるとこの帯状流が不安定化することを示唆する結果もPIV法によって得られている。

 数値計算においては,軸対称流の仮定の下でスペクトル法によって速度場が求められ,実験における慣性波の励起と伝搬,帯状流の生成などが数値計算でも得られることを確認すると同時に,速度場のより詳細な解析が行われている.たとえば,慣性波の波束の幅と帯状流の幅がE1/3に比例することが示されている.また,流体の運動エネルギーが,定常流,慣性波とその高調波の間でどのように分配されるかについても調べている.最後に,上で述べたような主に帯状流と慣性波の波束からなる速度場がRoの増加とともに不安定化するメカニズムとして,内球付近でのゲルトラー不安定についても議論している.

 本論文は,内球での振動的な外力に対する回転流体の応答に関して,実験と数値計算の両方を用いて興味深い結果を示している.回転球殻内での慣性波の励起や伝搬および定常帯状流に関する注意深い実験による可視化とデータ解析,およびそれらの挙動の数値計算と理論的解析による検証は,回転系での流体運動に関する新しい知見を与えるものであり,その流体力学の発展への寄与は高く評価される.また,本論文は地球流体力学や惑星流体力学における外力による慣性波や帯状流の生成の問題にも間接的に関係し,これらの分野への波及効果も期待できる.

 以上の理由から,本論文を第7回FDR賞にふさわしい論文であると判断した.

FDR編集委員長 船越満明