コンテンツの開始

第3回FDR賞(2010年受賞) 

論文題目:

A driving mechanism of a turbulent puff in pipe flow

著者:

Masaki Shimizu and Shigeo Kida

掲載年巻号頁:

2009年,第41巻,4号,045501

本論文は,直接数値シミュレーションによる円管流の乱流遷移に関する研究である.円管流の遷移に関する研究はレイノルズの実験観察以来125年以上の歴史があるが,臨界レイノルズ数(最小遷移レイノルズ数)は理論的には未解決のままである.本論文の著者らは,平面クエット流で見出された進行波解や不安定周期解のような,乱流の生成維持に重要な役割を演じるナビエ・ストークス方程式の解を見つけることがこの問題への一つの理論的アプローチであると考え,そのような解の候補として平衡状態の乱流パフ(turbulent puff)に着目している.本論文では,このような目的の研究の第1ステップとして,著者らが開発した高精度スペクトル法による数値シミュレーションにより乱流パフの平衡状態を実現し,速度場や渦度場の詳細な解析に基づいて,次のようなパフの自己維持機構を提案している.パフの中の乱れが縦渦を伴う低速ストリークを管壁近くに生み出す.これは壁乱流の再生成サイクルの開始と同様である.パフの流下とともに低速ストリークはパフの上流側に取り残され,パフ後端の層流・乱流界面では低速ストリークの上の三次元剪断層が強まりケルビン・ヘルムホルツ不安定が起きる.この不安定性により生成される渦がパフに取り込まれてパフ内の乱流運動を活発にし,乱流パフを維持する.このような平衡状態の乱流パフの乱れ維持機構を構成する一連の現象は本論文ではじめて詳細に観察されたものであり,臨界レイノルズ数の理論的解明までは至っていないが,管内流の乱流遷移研究への新しい路を開くものであると言える.

FDR編集委員長 船越満明